2024年11月25日月曜日

格差社会

  富の分配平均などとは思いも寄らぬ空想である。
要するに富むものがあるから貧者がでるというような論旨の下に、世人がこぞって富者を排擠(はいさい)するならば、いかにして富国強兵に実を挙げることが出来ようぞ。

個人の富は、すなわち国家の富である。
個人が富まんと欲するに非ずして、如何でか国家の富を得べき、国家を富まし自己も栄達せんと欲すればこそ、人々が、日々勉励するのである。
~中略~
とはいえ、常にその間の関係を円満ならしめ、両者の調和を図ることに意を用うることは、識者の一日も欠くべからざる覚悟である。
算盤と権利

渋沢栄一 (著)
論語と算盤
角川学芸出版 (2008/10/25)
P233

論語と算盤 (角川ソフィア文庫)

論語と算盤 (角川ソフィア文庫)

  • 作者: 渋沢 栄一
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2013/07/25
  • メディア: Kindle版



 

自立支援
弱者を救うは必然のことであるが、更に政治上より論じても、~(中略)~

成るべく直接保護を避けて、防貧の方法を講じたい。
「論語と算盤」仁義と富貴

渋澤 健 (著)
巨人・渋沢栄一の「富を築く100の教え」
講談社 (2007/4/19)
P194

巨人・渋沢栄一の「富を築く100の教え」 (講談社BIZ)

巨人・渋沢栄一の「富を築く100の教え」 (講談社BIZ)

  • 作者: 渋澤 健
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2007/04/19
  • メディア: 単行本



 

 1人当たりの人件費で見ますと、大企業とそれ以外で次のようにあまりに大きな格差が生まれています。
~中略~ 
軽視できないのは、絶対人数でいいますと、中小・零細企業の従業員が全体の72%以上も占めていることです。
その上、不況下の「1人当たりの人件費」の低下ぶりにまで大きな格差がみられるのです。
~中略~

 最近では、会社が儲かれば時差をおいて従業員もまた潤う、という常識は過去のものとなっています。
親企業と下請け中小企業の間においても、雨水を地面へと導く樋が取りはずされ、上が潤えばやがて下も潤う、という「トリクル・ダウン」の仕組みは消えてしまったように見えます。
親企業は世界中で一番コストの安いところから部品を買う世界最適調達が常識となったからです。

内橋 克人 (著)
共生経済が始まる 世界恐慌を生き抜く道
朝日新聞出版 (2009/3/19)
P35

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 日本の生活は、天国に近い、と私は地震の前から言い続けていた。
しかしたとえば社民党党首は「日本は格差社会」だと言い続けて来た。日本は格差社会どころではない。
どんな貧しい人でも、水道と電気の恩恵にだけは浴している。テレビを見られない人も、お金がないから救急車に乗れない人もいないのだ。
どうしてこれが格差社会なのだろう。

人生の原則
曾野 綾子 (著)
河出書房新社 (2013/1/9)
PP68

人生の原則

人生の原則

  • 作者: 曾野 綾子
  • 出版社/メーカー: 河出書房新社
  • 発売日: 2013/01/09
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)


おそらく、一部の人間が物質的環境において未開人よりましな状態に置かれてきたことに正比例して、他の文明人の中には未開人以下に堕落していった人間がいるということは明らかであろう。
上流階級といわれる人々の贅沢な生活は下層階級の貧乏な生活とバランスがとれている。
一方に宮殿があれば、他方には救貧院と「声なき貧民たち」がいる。
~中略~
一般的に文明社会の証しとなるものが存在する国では、その大半の住民たちの生活状態が未開人ほど落ちてはいないと思うのは間違っている。

森の生活
D・ヘンリー・ソロー (著), 佐渡谷 重信 (翻訳) (著)
講談社 (1991/3/5)
P53

森の生活 (講談社学術文庫)

森の生活 (講談社学術文庫)

  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 1991/03/05
  • メディア: 文庫


P128
内閣府の「国民生活選好度調査」によれば、「収入や財産の不平等が少ないこと」が「ほとんど満たされていない」と考えるものの比率は、一九八〇年代から傾向的に上昇しており、二〇〇五年には四人に一人になっていた。その上、統計上も実際に所得格差がこの間上昇傾向をもっていたことは多くの研究で明らかにされている。

 それでは、なぜ所得格差が継続的に拡大してきたのだろうか。この疑問について、筆者は拙著「日本の不平等」で詳細に論じた。 傾向的な所得格差の拡大の多くは、人口の高齢化で説明できる。日本では最近の二十代を除いて、同じ年齢層内の所得格差は変わっていない。
それにもかかわらず、日本全体として所得の不平等化が進んできたのは、人口の高齢化が原因だ。
 日本では年齢が高い人のほうが年齢層内の所得格差が大きい。人口高齢化によって日本人のなかで所得格差が大きいグループが増えてきたため、日本全体の所得格差がひろがってきたのだ。
日本は若い頃の所得格差が小さく、所得格差は四十歳以上になって顕著になる。年功的処遇のもとで、競争の結果が出るのは四十歳を過ぎてからだ。人口の高齢化によって結果が出てきた年齢層の人口比率が高まったのである。
 ただし、一九九〇年代の終わりから二〇〇〇年代の初頭にかけては、若年層での所得格差が拡大している。この若年層の格差拡大は、超就職氷河期で急増したフリーターと失業者が原因である。超就職氷河期が発生したのは不況が原因だ。実際、その後の景気回復で二〇〇八年までの新規学卒者の就職状況は好転していった。
 所得格差の拡大の多くは、人口構成の高齢化で説明できる。しかし、生活水準の格差を示す消費の格差は五十歳以下の年齢層で拡大する傾向にある(「日本の不平等」)。
なぜ消費と所得で格差の推移に違いがでるのだろうか。消費を決定するのは現在の所得だけではなく、将来の所得と現在の資産も影響を与えるからだ。資産格差や将来の所得格差が拡大すると現在の格差も拡大する。

 

P130
アメリカ経済学会の学会誌「アメリカン・エコノミック・レビュー」の二〇〇六年五月号には、アメリカの所得格差の実態について分析した三つの論文6が掲載された7。 いずれの論文も一九九〇年代以降のアメリカにおける所得格差拡大の特徴は、高所得者、高学歴者の所得が他の所得階層に比べて急激に高まったこと、高学歴者のなかでの格差が大きくなったことを示している。~中略~
しかも、高額所得者がより高所得になった原因は、資産所得が増えたことではなく、給与所得が増えたことである。このような高額所得者による所得の独占度の高まりは、イギリスやカナダといった英語圏で共通に観察される。
一方、日本とフランスでは、高額所得者の所得の独占度は第二次世界大戦後、ほぼ二パーセント程度で安定して推移してきており、その傾向は二〇〇〇年代に入っても、変化していない8。
 近年、アメリカにおける高額所得者がより高所得になった理由を、経済学者はどのように説明してきただろうか。最も標準的な説明は、技術革新とグローバル化である。

P132
アメリカでは、急激なスピードで所得格差が拡大しているのに、拡大格差が政治問題化しているわけではない。逆に、日本では高齢化以外の要因での格差拡大は小さいにも関わらず、所得格差は政治問題化している。

P134
 日本人は「選択や努力」以外の生まれつきの才能や学歴、運などの要因で所得格差が発生することを嫌うため、そのような理由で格差が発生したと感じると、実際のデータで格差が発生している以上に「格差感」を感じると考えられる。また、日本の経営者の所得がアメリカのように高額にならないのは「努力」を重視する社会規範があるためかもしれない。
一方、学歴格差や才能による格差を容認し、機会均等を信じている人が多いアメリカでは、実際に所得格差が拡大していても「格差感」を抱かない。こうしたことが、日米における格差問題の受け止め方の違いの理由ではないだろうか。

P137
 日本で高いのは、相対的貧困率であって、絶対的貧困率ではない。相対的貧困率は、所得の順位が五〇パーセントの人の所得の半分以下の人の人の人数比である。日本では、比較的低位から中位の人の所得が高いので、五〇パーセント目の人の所得(中位所得)は高めに出る。~中略~
 日本で貧困状態にあるとみなされる人の所得は、世界で見ると高いほうであることは事実である。絶対的な意味で貧しいのではない。病院に行けない人や食事をとれない人や服を買えない人の比率が高いわけではないことが、いくつかのアンケート調査から知られている。しかし、貧しいと感じる人が多ければ、ストレスを感じるために、さまざまな社会問題が起こってくる原因になるはずだ。

P140
 なぜ、最近になって貧困率が高くなってきたのだろうか。これは、いくつかの理由がある。
 第一は、不況の影響である。不況のために経済全体の所得が低下しているが、低所得の人が失業すると貧困につながる可能性が高い。
 第二は、技術革新の影響である。コンピューターの発達で、コンピュータ―の得意な計算、決り切った仕事はどんどん人からコンピュータ―に変わってきている。現在は駅の改札はすべて自動改札であるが、昔は駅員の人が切符を確認していた。~中略~
 第三は、グローバル化の影響である。貿易が進んで、労働力が安い外国から製品が輸入されるようになったことが日本の低賃金労働の賃金を引き下げたのである。
~中略~ 世界との競争にさらされる製品を作っている場合は、その賃金は日本国内だけではなく、外国の賃金水準の影響を受けることになる。このため、日本国内で低賃金労働が増えてきているのである。
 第四に、高齢化の影響がある。高齢者は引退して、勤労期に比べると所得が減っている人々が多い。そのため、高齢者が増えてくると、所得で定義した相対的貧困率は上昇することになる。ただし、高齢者の所得が低いからといって本当に貧しいとは限らない。というのは、引退した高齢者のなかには、仕事をしていた時に貯金をしたり住宅を買ったりして、、豊かな人も多いからである。
 第五に離婚率の上昇の影響がある。母子家庭は、母親の労働時間が限られる傾向があるため、貧困になりやすい。
競争と公平感―市場経済の本当のメリット
大竹 文雄 (著)
中央公論新社 (2010/3/1)

競争と公平感 市場経済の本当のメリット (中公新書)

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