にべもない言い方をすれば、ヨーロッパに、文明的な明暗ができるのは、ローマの植民地になったかならなかったかによる。
ローマの植民地だった地域のほうが、胸を張っているのである。フランスがいい例で、元来、ケルト人(ガリア人)の地だったその地が濃密に植民地になったことによって、フランス人たちはローマ文明の継承者であるという実質と自負心をもち、いまなおヨーロッパにおける中華思想をもっているのではあるまいか。
ドイツは一部しか植民地にならなかったためにつねに(あるいは潜在的印象として)ヨーロッパの田舎者あつかいをうけつづけた。一方、大ブリテン島の場合は”幸いにも”幾度かにわたってローマに征服され、その文明に浴した。
アメリカ素描
司馬 遼太郎(著)
新潮社; 改版 (1989/4/25)
P200
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