2024年12月21日土曜日

帰っておいで

P113
 こうした現象(住人注;大都市部の自治体における「過疎」)は、地方の大都市間でも見られる。同じ福岡県の政令指定都市であっても、北九州市は(住人注;社人研が2010年の国勢調査に基づいて予測した、2040年の人口が)19.7%も減るのに、福岡市は1.7%にとどまる。年齢別の増減まで比較すると、高齢者が大きく増える自治体、勤労世代が激減する自治体など事情はそれぞれ異なる。こうした事情を考慮せず、「大都市部と地方」といゆ単純な発想で人口減少対策を考えたのでは成果は上がらない。

P114
 実は、ここ(住人注:東京への一極集中)でも重要な視点が欠落しがちだ。往々にして東京に住む人が今後味わう”医療・介護地獄”が忘れられるのである。これは近い将来、深刻な社会問題になることだろう。
東京一極集中の是正を考える場合、この問題の解決を避けて通ることはできない。
「2025年問題」の項でも指摘したが、東京圏の高齢者が激増するのは、経済成長期以降に上京した”かつての若者”が年齢をを重ねたことに加え、現在の勤労世代が地方の老親を呼び寄せるからだ。
~中略~
 東京は、日本最大の医療集積地であるが、前述したようにビジネス中心の街づくりをしてきたため、介護を要する高齢者用のベッドが極度に不足している。仮に、高度な治療を受けられたとしても、その後、転院先や療養先に困ることになる。
 同データ集によれば、介護保険施設のベッド数と高齢者住宅を合わせた高齢者向けのベッド数は、75歳以上1000人あたり100で全国の121を大きく下回る。東京23区の一部では危機的な状況にある。

P116
 こうしたアンバランスを考えれば、退職後は東京から地方に「脱出」するのも1つの選択肢となろう。
東京一極集中と地方の人口減少という2つの課題の同時解決ともなる。人口減少時代は、国民1人ひとりにどういう老後を選ぶかを問うているのである。

P125
 もう1つ大きく誤解されてきたことがある。「地方からの人口流入が続く大都市部では若者は増え続けている」との錯覚だ。
生産年齢人口について2010年と2015年の国勢調査で増減を比較してみると、東京都は約11万6000人減っている。国土交通省の「首都圏白書」(2017年)によれば、首都圏では2000年を境に減少を続けている。
「人口は増えているのに、生産年齢人口は減っている」というのが、この十数年の間に、東京周辺で起こっていることなのだ。この流れはますます強まるだろう。

P126
 要するに、日本の少子高齢化と人口減少の実態は、大都市部と地方で大きく異なっているのだ。
大都市部では総人口はあまり減らず、高齢者の実数だけが増えていく。これに対して、地方では総人口は減少するが、高齢者の実数はさほど増えるわけではない。

 

P130
 勤労世代が減れば、税収増も期待できず、高齢者向け政策を展開しようにも財源が追いつかない。財源問題を解決するには、自治体は税金や社会保険料のアップと、行政サービスのカットを同時に行なう「ダブル負担増」に踏み切るしかない。しかも、高齢者は長期的に増えるため、それは繰り返し行わざるを得ない。
 つまり、大都市部に住み続ける限り、負担増とサービス低下に繰り返し見舞われるということだ。住民の生活水準は低下し、街そのものが活気と魅力を失う。やがて、大都市部の自治体は行き詰るだろう。

未来の年表 人口減少日本でこれから起きること
河合 雅司 (著)
講談社 (2017/6/14)

未来の年表 人口減少日本でこれから起きること (講談社現代新書 2431)

未来の年表 人口減少日本でこれから起きること (講談社現代新書 2431)

  • 作者: 河合 雅司
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2017/06/14
  • メディア: 新書

<椿大師「椿堂」大分県豊後高田市黒土/div>

2024年12月19日木曜日

危険なバブルの見分け方

 では、危険なバブルなのか、それとも経済の自然な発展なのか、判断する基準はあるのだろうか。
これは非常に難しい。しいて言えば、次の3つの点に注目すべきだろう。
①経済見通しの過度な自信
②信用取引の拡大
③投資初心者の新規参入
~中略~
 自分の周りに株式投資を始めたという人が増えたら、それは十分に危険なバブルのサインと言えるだろう。


世の中の罠を見抜く数学
柳谷晃 (著) 
セブン&アイ出版 (2013/3/1)
P150

世の中の罠を見抜く数学

世の中の罠を見抜く数学

  • 作者: 柳谷晃
  • 出版社/メーカー: セブン&アイ出版
  • 発売日: 2018/10/29
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)

 

椿大師「椿堂」大分県豊後高田市黒土

云いわけすべからず

子孫、年わかき者、父母兄長のとがめをうけ、いかりにあはば、父祖の言の是非をゑらばず、おそれつつしみてきくべし。
いかに、はげしき悪言をきくとも、ちりばかりも、いかりうらみたる心なく、顔色にあらはすべからず。かならず、わが理ある事を云いたてて、父兄の心にそむくべからず。只ことばなくして、其せ(責)めをうくべし。
是子弟の、父兄につかふる礼なり。父兄たる人、もし人のことばをきき損じて、無理なる事を以て、子弟をしゑた(虐)げせむとも、[子供において]いかるべからず。
うらみ、そむける色を、あら(顕)はすべからず。
云いわけする事あらば、時すぎて後、謝すべし。或(は)別人を頼みて、いはしむべし。
十分に、われに道理なくば、云いわけすべからず。

和俗童子訓 巻之二 
総論 下

養生訓・和俗童子訓
貝原 益軒 (著), 石川 謙 (編さん)
岩波書店 (1961/1/5)
P233

養生訓・和俗童子訓 (岩波文庫)

養生訓・和俗童子訓 (岩波文庫)

  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2021/04/09
  • メディア: 文庫

 

子曰わく、父母に事( つかえて )は幾( ようや )くに諫め、志の従わざるを見ては、また敬( つつし )んで違( たが )わず、労( うれ )えて怨みざれ。


~中略~


先生がいわれた。


「 父母のおそばで用事をしていて、誤りを見つけたときには、まず遠まわしに諫言申し上げよ。
諫めをとりあげられない意向と察したら、つつしんでこれに違背しないようにし、
心の中では憂慮していても、怨みをいだいてはならない」


里仁篇

                  論語
孔子 (著), 貝塚 茂樹
中央公論新社 (1973/07)
    P105

 

論語 (中公文庫)

論語 (中公文庫)

  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 1973/07/10
  • メディア: 文庫

 

 

 

わたしたちは、「何かをしようとしている」としょっちゅう口にします。減量であったり、運動であったり、職探しであったり。
でも、ほんとうのところは、しているのか、していないのかどちらかなのです。「しようとしている」というのは言い訳に過ぎません。
何か事を起すには、最低でも一〇〇パーセントの力を出して実現のために努力しなくてはなりません。一〇〇パーセントの力を出す覚悟がないなら、目標が達成できなかったとき、責めるべきは自分しかいないのです。
 言い訳は無意味、専門的に言えばたわ言である、とバーニー(住人注;スタンフォード大学の機械工学教授バーニー・ロス)は教えています。
人は、するべき努力をしなかったという事実を繕うために言い訳をします。
~中略~
できなかったことの言い訳や理由は、「もっともらしく」聞こえるなら、社会的に容認されるとバーニーも認めています。しかし、人に対して言い訳をしなくていけないと感じたとしても、自分自身には言い訳をしてはいけません。

20歳のときに知っておきたかったこと スタンフォード大学集中講義
ティナ・シーリグ (著), Tina Seelig (原著), 高遠 裕子 (翻訳)
CCCメディアハウス (2010/3/10)
P193

 

新版 20歳のときに知っておきたかったこと スタンフォード大学集中講義

新版 20歳のときに知っておきたかったこと スタンフォード大学集中講義

  • 出版社/メーカー: CCCメディアハウス
  • 発売日: 2020/11/27
  • メディア: Kindle版
富貴寺 大分県豊後高田市田染蕗

2024年12月18日水曜日

アーンツ・シュルツの法則

 

19世紀中期,Arndt Rudolph と Schultz Hugoは,次のような法則を提唱した。
「あらゆる刺激は,それが非常に弱い刺激である場合,生体の反応を刺激することはない。しかし,ある刺激域に達すると,生体の反応を促進させ,強い刺激は逆に抑制させる。
さらに強い刺激は,生体の反応を停止させる」という法則であり,アーンツ・シュルツの法則(Arndt-Schultz Law)と呼ばれている。

皮膚科・形成外科医のためのレーザー治療
渥美 和彦 /荒瀬誠治/大城俊夫/中島龍夫 (編)
メジカルビュー社 (2000/08)
P52

 

 

皮膚科・形成外科医のためのレーザー治療

皮膚科・形成外科医のためのレーザー治療

  • 出版社/メーカー: メジカルビュー社
  • 発売日: 2000/08/01
  • メディア: 単行本

 

京都北白川天然ラジウム温泉えいせん京 【旧 源泉湧出元 北白川天然ラジウム温泉】
https://onsen.nifty.com/kyoutoshinai-onsen/onsen003109/
より引用

 量-反応関係の重要性は500年前,ルネサンス期の内科医パラケルススが「毒性学の第1法則:すべてのものは毒物であり,毒物でないものなどはなく,毒性のなさは量だけで決まる」と明言したとき以来,認識されていた.
つまり,有益な薬でさえ量が多すぎれば毒になり,毒物や細菌も量が少なければワクチン注射のように防護的な反応を引き出す.

リスク 不確実性の中での意思決定
Baruch Fischhoff (著), John Kadvany (著),中谷内 一也 (翻訳)
丸善出版 (2015/4/26)
P70

 

リスク 不確実性の中での意思決定 (サイエンス・パレット)

リスク 不確実性の中での意思決定 (サイエンス・パレット)

  • 出版社/メーカー: 丸善出版
  • 発売日: 2015/04/26
  • メディア: 新書

早野 そのラドンというのは、周期表でいうと「水兵」の「へ」のずっと下のほうにあるんです。一番右の列の下の方です。このラドンという元素は、重たいけど気体なんですね。
糸井 重たいけど気体。
早野 うん、気体なんです。岩の中、コンクリートの中、土の中とかに、すごく微量だけれどもウランがあって、そのウランが長い長い年月の中で、あるときα線をぽこっと出して、ラドンになるんです。で、そのラドンは気体なので、地面から出てきて、空気の中に漂ってたりする。
私たちは今この瞬間もラドンを吸っているんです。だから、肺の中で、そのラドンによって内部被ばくしてます。温泉の成分として微量のラドンを含むものに療養効果があるとされる一方で、住居内における高濃度のラドンは健康リスクがあることもわかっています。
糸井 あ、そうなんですか。でも、ラドン温泉は大丈夫?
早野 ラドン温泉、線量としては非常に低いですから。お湯に浸かってる時間が、そんなに長いわけじゃないですし・・・・・。

知ろうとすること。
早野 龍五 (著), 糸井 重里 (著)
新潮社 (2014/9/27)
P142

 

知ろうとすること。(新潮文庫)

知ろうとすること。(新潮文庫)

  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2015/05/01
  • メディア: Kindle版

京都という町はおそろしい町

  そのうち、だんだんわかってきたことだが、この青年は、きのうきょう、西本願寺に出入りしたのではなく、という。
根掘り葉掘りきいてみると、おじいさんもひいじいさんも、
「お菓子のご用はおへんか」
ときいてまわったそうだし、さらにきいてみると、三百数十年前の天正年間から、れんめんと「お菓子のご用」をきいてきたという。
 そのころ、西本願寺は、いまの大阪城の位置に、城郭同然の巨刹を築いて、天下の門徒を支配していた。
~中略~
 その石山合戦の兵糧方だったのが、この青年の先祖だというのである。
この菓子屋さんには、
松風(まつかぜ)
という名菓があり、それは石山合戦のときの携帯口糧だったという。
~中略~
京都という町は、これほどにおそろしい町なのだ。
(昭和36年11月)


司馬遼太郎が考えたこと〈2〉エッセイ1961.10~1964.10
司馬遼太郎 (著)
新潮社 (2004/12/22)
P64

司馬遼太郎が考えたこと〈2〉エッセイ1961.10~1964.10 (新潮文庫)

司馬遼太郎が考えたこと〈2〉エッセイ1961.10~1964.10 (新潮文庫)

  • 作者: 遼太郎, 司馬
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2004/12/22
  • メディア: 文庫

 


西本願寺 唐門[京都]

記憶は薄れる。まして他人の記憶は

よく戦争は語り継がねばならない、などと言う人がいるが、体験というものは、当人さえ年々歳々記憶が薄れる。
ましてや他人の体験した恐ろしい話など、初めから別人の意識に移し植えられるものではないのである。

人生の原則
曾野 綾子 (著)
河出書房新社 (2013/1/9)
P176

人生の原則 (河出文庫 そ 1-5)

人生の原則 (河出文庫 そ 1-5)

  • 作者: 曾野 綾子
  • 出版社/メーカー: 河出書房新社
  • 発売日: 2016/02/08
  • メディア: 文庫

 

興味のなくなるところ、記憶もまたなくなる。
(「格言と反省」から)

ゲーテ格言集
ゲーテ (著), 高橋 健二 (翻訳)
新潮社; 改版 (1952/6/27)
P65

 

ゲーテ格言集(新潮文庫)

ゲーテ格言集(新潮文庫)

  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2016/04/22
  • メディア: Kindle版

気分と免疫はつながっている

免疫細胞の中には、神経伝達物質のレセプターをもっているものがある。
神経伝達物質とは神経細胞から神経細胞へとインパルスを伝えるもので、つまり「気分」の決定権を持っている物質だ。
免疫細胞がこれのレセプターをもっているということは、免疫細胞と気分は、つながりをもっているということだ。

多田 富雄 (著), 南 伸坊 (著)
免疫学個人授業
新潮社 (1997/11)
P158

免疫学個人授業

免疫学個人授業

  • 作者: 多田 富雄
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 1997/11
  • メディア: 単行本



P158
アレルギーの治療は、昔に比べるとだいぶロジックのあるものが多くなってはいるが、まだまだ珍奇な民間療法も多い。それなりに有効とされている理由のひとつは、アレルギーの発症には著しい心因性要素があるからであろう。アレルゲンの見つからない成人の気管支喘息は山ほどあって、免疫学的にアレルゲンを特定できるのはむしろ少数派である。そういう例では、ストレス、精神的ショック、騒音、気圧、運動その他あらゆるものが発作の誘引となる。

~中略~
汎アレルギー症候群というのもカナダで報告されている。電話機、食器、ポリエステルの下着、眼鏡、新聞、便座など、あらゆる肌に触れるものによって皮膚に激しい発疹が出る。拒否の程度の低いごくわずかの物の間にひっそりと身をおき、社会から隔離されて暮らすほかはない。
 このようなすさまじい拒否に対しては、抗原と抗体の特異的な反応を基礎にしていた免疫学はお手上げである。なぜアレルギーはここまでエスカレートしてしまったのであろうか。

P164
 人工的な環境変化によるものはやむを得ないとして、アレルギーの拒否の姿勢はますます頑なになってきたらしい。夫の精液に対して全身性のアレルギー症状としてのショックを起こした女性も、何例か報告されている。
ペットに対するアレルギーは誰でも知っている。犬のフケに対して、飼い主はしばしばペットアレルギーを起こす。しかし、最近、飼い主の方が人間のフケに対してアレルギーを起こした例が見つかった。
相互拒否の根は深い。

多田 富雄 (著)
免疫の意味論
青土社 (1993/04)

免疫の意味論

免疫の意味論

  • 作者: 多田 富雄
  • 出版社/メーカー: 青土社
  • 発売日: 1993/04/30
  • メディア: 単行本


  ここでは(住人注;ベネズエラの熱帯雨林に住むヤノマミ)マラリアが流行している。悪寒、発熱、頭痛の発作時にシャーマンは悪霊を取り除こうとする。四、五時間後、発作はおさまり、嘘のように症状は緩和する。実はマラリア発作は放っておいても四、五時間で発作はおさまるのだ。
 しかし病気は心理的なものが大きく作用する。シャーマンの治療は他の病気に対しても大きな威力を発揮している。

関野 吉晴 (著)
グレートジャーニー―地球を這う〈1〉南米~アラスカ篇
筑摩書房 (2003/03)
P103

グレートジャーニー―地球を這う〈1〉南米~アラスカ篇 (ちくま新書)

グレートジャーニー―地球を這う〈1〉南米~アラスカ篇 (ちくま新書)

  • 作者: 関野 吉晴
  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
  • 発売日: 2003/03
  • メディア: 新書


病を忘るれば病おのずから逃る
すべての疾病は不覚に生じて自覚に成るものが多い。自覚せざるときは病既に身に生じて居てもなおいまだ病を知らず、 一たび病あるを自覚するに及んで病は大にその勢を張る。
換言すればもし自覚せざれば病はあるもなおなきが如くで、また自覚すれば病はなきもなおあるが如きである。
進潮退塩(明治四十五年七月)

努力論
幸田 露伴 (著)
岩波書店; 改版 (2001/7/16)
P233

努力論 (岩波文庫)

努力論 (岩波文庫)

  • 作者: 幸田 露伴
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2001/07/16
  • メディア: 文庫


万物全て、これ師たらざるものなし

  「試験に合格しようが、残念であろうが、どちらも自分の人生を豊かにすることができたならば等価値だ」と思えるようになればいいんだなと、思ったんですね。
~中略~
 その人が自分にとって心地よいことを言ってくれようが、そうでなかろうが、やはりどちらも意味があることなんです。

気に障ることを言われて、まだそこで苛立っているようならば、「自分は未熟な人間だと教えてくれた、自分にとって価値のある人である」と思えばいい。
「万物全て、これ師たらざるものなし」のように、どんなに嫌な人でも、まだ、自分が成長過程にあることを教えてくれる師だと、理屈で考える訓練を繰り返していったんです。
結果的に本当にそう思えるまでに10年かかりましたね。

“司法試験流” 知的生産術
伊藤 真 (その他), 野田 稔 (その他)
NHK出版 (2012/1/25)
P86

“司法試験流” 知的生産術 2012年2月 (仕事学のすすめ)

“司法試験流” 知的生産術 2012年2月 (仕事学のすすめ)

  • 出版社/メーカー: NHK出版
  • 発売日: 2012/01/25
  • メディア: ムック

 

 つまり本は結論を書いているものではなく、自分で結論に辿り着くための道具です。
私自身は本について、「本屋さんとは、精神科の待合室みたいなものだ。大勢の人(著者たち)が訴えを抱えて並んでいる」と思っています。
~中略~
そう考えると、つまらない本というものはあまりなくなるのです。どんなに自分と異なる考えの本でも、「この人、どうしてこんなつまらないことをわざわざ書こうとしたのか」を考えることが出来ます。なぜ、つまらないのか、どう書いたら面白いのかとか、そういうことを考える材料になります。

 実はこれは本に限った話ではありません。人と接する際でも同じことです。
「この人、なぜこんなに怒っているのか」「なぜこんなに不機嫌なのか」と考えていれば、好き嫌いがあまりなくなるものです。

養老 孟司 (著)
養老訓
新潮社 (2007/11)
P51

養老訓 (新潮文庫)

養老訓 (新潮文庫)

  • 作者: 孟司, 養老
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2010/06/29
  • メディア: 文庫

 

みんな自分が正しいと思って生きている

 人間は、それぞれ自分の考えに従って行動するものだ(またそうあってほしい)。それを自分とまったく同じ考えでなければいけないなどと思うのは、自分と体型も大きさも同じでなくてはいけないと言うのと同じくらい、傲慢なことだ。人間それぞれ、自分が正しいと思って生きている。ところが、ほんとうに誰が正しいかを知っているのは神一人なのだ。

父から若き息子へ贈る「実りある人生の鍵」45章
フィリップ・チェスターフィールド (著), 竹内 均 (翻訳)
三笠書房 (2011/3/22)
P40

父から若き息子へ贈る「実りある人生の鍵」45章 (知的生きかた文庫)

父から若き息子へ贈る「実りある人生の鍵」45章 (知的生きかた文庫)

  • 出版社/メーカー: 三笠書房
  • 発売日: 2011/03/22
  • メディア: 文庫


 その人がエゴイストであるのは、一般に善悪を判断するのは自分であるというふうに考えているからだ。
こういう野蛮な人間は世に少なくない。
「曙光」

超訳 ニーチェの言葉
白取 春彦 (翻訳)
ディスカヴァー・トゥエンティワン (2010/1/12)
147

超訳 ニーチェの言葉 (ディスカヴァークラシックシリーズ)

超訳 ニーチェの言葉 (ディスカヴァークラシックシリーズ)

  • 出版社/メーカー: ディスカヴァー・トゥエンティワン
  • 発売日: 2010/01/12
  • メディア: 単行本


   正しいことを「正しい」と主張することは「正しい」としても、それは理屈や事実としての正論であって、それを主張することで逆に目的が達せられなくなったとしたら、この主張は処し方として正しいといえるだろうか。

ビジネスを動かす「ウソの技法」
向谷 匡史 (著)
情報センター出版局 (2008/8/30)
P70

ビジネスを動かす「ウソの技法」

ビジネスを動かす「ウソの技法」

  • 作者: 向谷 匡史
  • 出版社/メーカー: 情報センター出版局
  • 発売日: 2008/08/30
  • メディア: 単行本


ゼンメルワイスは、「医者が手を塩素水で消毒するだけで、死亡者を激減させられる」ことを発見した。そしてその単純な「医者が手を洗う」方法を取り入れたところ、死亡率を一八%から一%に下げることに成功した。これはまさに画期的な発見であり、イノベーションである。
 しかし、その効果を証明する膨大なデータを一〇年にわたって集めたにもかかわらず、その方法は広まらなかった。その理由は大きく二つあると思われる。
一つの理由は、「これまで産褥熱で患者を死に追いやっていた原因は自分たちの手だった」という事実を医師たちが受け入れたくなかったことにある。
~中略~
 もう一つの理由は、ゼンメルワイスの啓蒙方法にあった。明らかなデータがあるにもかかわらず医師たちがその方法を受け入れようとしなかったので、ゼンメルワイスの説明は攻撃的で脅しのようになり、ついには医師を殺人者呼ばわりしはじめたのである。
~中略~
コロンブスの卵のように、後から聞けば「当たり前」のように思われるような、「コストや手間のかからないソリューション」が本質的である場合が多い。
~中略~
 どれだけ論理的に正しくて効果が期待できるソリューションであっても、フィールドで取り入れられなければなんの効果も出すことができない、

ビジネスマンのための「行動観察」入門
松波 晴人 (著)
講談社 (2011/10/18)
P267

ビジネスマンのための「行動観察」入門 (講談社現代新書)

ビジネスマンのための「行動観察」入門 (講談社現代新書)

  • 作者: 松波 晴人
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2011/10/18
  • メディア: 新書

 事業に成功するためには、「これが正しいんだ」という自分の信念がなければならない。
その信念が、「企業規模を大きくすること」でもよければ、利益をあげること」でもよい。 「新技術の開発」でも、「自分が有名になること」でもよい。もちろん「息子に継がせること」や「自分の好みを満たすこと」であってもよい。

 信念とは、もともと主観的なものである。ここで大事なのは、自分の正義は自分だけの正義、他人や世間が同意するとは限らないことを、承知しておくことである。
「「次」はこうなる」

堺屋太一の見方 時代の先行き、社会の仕組み、人間の動きを語る
堺屋 太一 (著)
PHP研究所 (2004/12/7)
P99

堺屋太一の見方 時代の先行き、社会の仕組み、人間の動きを語る

堺屋太一の見方 時代の先行き、社会の仕組み、人間の動きを語る

  • 作者: 堺屋 太一
  • 出版社/メーカー: PHP研究所
  • 発売日: 2004/12/07
  • メディア: 単行本

人はその好むところもって、真実とするなり。
[デモステネス] 古代ギリシャの弁論家 | B.C.384-322

人生はワンチャンス! ―「仕事」も「遊び」も楽しくなる65の方法
水野敬也 (著), 長沼直樹 (著)
文響社 (2012/12/11)
50


人生はワンチャンス!   ―「仕事」も「遊び」も楽しくなる65の方法

人生はワンチャンス!   ―「仕事」も「遊び」も楽しくなる65の方法

  • 出版社/メーカー: 文響社
  • 発売日: 2012/12/11
  • メディア: 単行本


P62
 人を苦しめる「判断」には、「自分はエライ」「正しい」「優れている(はずだ)」と肯定しすぎる思いもあります。仏教では、こうした心理を”慢(まん)”と呼びます。
 ”慢”は、いっときは自分を肯定できる気がして心地よいのですが、高慢、傲慢、プライド、優越感といった思いは、結局、不満や、うぬぼれゆえの失敗を招いて、損をします。

P63
 人はみな、「自分が考えることは正しい」と、心のどこかで思っています。  しかし、その判断が正しいのか、間違っているのかは、一体どのように「判断」するのでしょうか。
 ブッダは、このように語っています。
 私が言葉を語るのは、相手に利益となる場合である。  真実であり、相手に利益をもたらす言葉であれば、ときに相手が好まない言葉であっても、語るべきときに語る。それは相手への憐れみ(慈悲)ゆえである。
                      ―アバヤ王子との対話 マッジマ・ニカーヤ

P67
 正しく理解する者は、「自分が正しい」と思うこと(慢)がない。
 だから、苦しみを生み出す「執着の巣窟」(わだかまり)に引き込まれることはない。
                     ―スッタニパータ<あるバラモンとの対話> の節

P72
 もう一つ大切なのは、「素直になる」ことです。自分が一番ラクになれるからです。
 自分はエライ、正しいという”慢”の心に固まってしまうと、周囲との間に「壁」ができてしまいます。人とわかり合えなくなります。また、何か言われると自分を否定された気がして、逆上したり、落ち込んだりと、苦悩を溜めていきます。
 こうした苦しみは、周囲が問題なのではありません。「自分は正しい」という思い込みが、原因なのです。
~中略~
 率直に言って、「自分は正しい」という思いなんて、あまりに小さな自己満足にすぎません。その思いが、誰を幸せにしているというのでしょうか。

反応しない練習 あらゆる悩みが消えていくブッダの超・合理的な「考え方」
草薙龍瞬 (著)
KADOKAWA/中経出版 (2015/7/31)

反応しない練習 あらゆる悩みが消えていくブッダの超・合理的な「考え方」

反応しない練習 あらゆる悩みが消えていくブッダの超・合理的な「考え方」

  • 作者: 草薙龍瞬
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2015/07/29
  • メディア: Kindle版

2024年12月17日火曜日

いい年なんか気にしない

 中高年からは、「いい年をして」と周りから言われるのを過常に気にしたり、自分に言いきかせたりしないで、面白そうと思ったことはやってみることだ。
ましてお金と時間があれば、今まで知らなかった強い刺激を得ることは比較的簡単だ。

人は「感情」から老化する―前頭葉の若さを保つ習慣術
和田 秀樹 (著)
祥伝社 (2006/10)
P73

 人は「感情」から老化する―前頭葉の若さを保つ習慣術 (祥伝社新書)

人は「感情」から老化する―前頭葉の若さを保つ習慣術 (祥伝社新書)

  • 作者: 和田 秀樹
  • 出版社/メーカー: 祥伝社
  • 発売日: 2006/10/01
  • メディア: 新書


 年をとれば額にしわが寄るのは仕方ないが、心にまでしわを作ってはならない。
ジェームス・ガーフィールド

カーネギー名言集 ハンディーカーネギー・ベスト (3)
ドロシー カーネギー (著)
創元社 (1986/11)
P39

 人生五十年―いまの若い人は、あまり聞いたことのない言葉かも知れません。どういうことかと言えば、私たちは長いあいだ、人生の寿命はほぼ五十年、そこまでは、どうにか生きていたい、でも、それ以後は余生と考えてきたのです。
 戦前は五十歳を越えたらもう年寄りで、七十を越えたら、古来稀(こらいまれ)なり(古稀(こき))ということで、長寿の人は非常に例外的で、尊ばれていたのです。
 しかし、戦後七十年たった、二十一世紀の現在ではどうでしょうか。
 五十歳は働き盛り、七十歳過ぎても現役という方が、どんどん増えています。
 いま盛んに雑誌やテレビで大騒ぎをする不倫の問題も、二十代、三十代というよりも、五十代、六十代の女性たちが、心身ともに青春時代のような情熱で、ラブ・アフェアをくり返しているという報告もあります。

百歳人生を生きるヒント
五木 寛之 (著)
日本経済新聞出版社 (2017/12/21)
P47

人生百年を生ききる (PHP文庫)

人生百年を生ききる (PHP文庫)

  • 作者: 松原 泰道
  • 出版社/メーカー: PHP研究所
  • 発売日: 2021/07/06
  • メディア: Kindle版

年をとったら

P216
 老いて子に養われるようになると、若いときから一緒にいるものに対しては怒りやすくなる。

欲深く、子を責め、人をとがめて、節度を失う。心を乱すものも多い。そうならないように、自ら我慢も必要である。
 若いときに慎み深く節度を守っていたとしても、老人になると欲深くなり怒りやうらみごとが多くなる人が多い。
後略~

P217
 老いると気力が少なくなる。気力をへらさないようにしなければいけない。
まず、第一に怒らないこと。憂い、悲しみ、泣き、嘆かないこと。
葬儀には関わらないこと。使者の家族を訪ねないこと。
また、もの思いにふけらないこと。
後略~

P225
 年をとったら、心の楽しみのほかに気をつかってはいけない。時の流れにしたがって楽しむといい。
悩み事がなく、四季の移り変わりや、美しい風景、自然の美しさなどを、楽しむのがいい。

養生訓 現代文
貝原 益軒 (著) , 森下 雅之 (翻訳)
原書房 (2002/05)

養生訓 現代文

養生訓 現代文

  • 出版社/メーカー: 原書房
  • 発売日: 2021/02/17
  • メディア: 単行本

 

 (住人注;思春期と)同様に老年期には老年期に特有なP(住人注;親的な自我状態)、A(住人注;大人の自我状態)、C(住人注;幼児的な自我状態)のアンバランスが考えられる。この一つのタイプとして、第6図のように、巨大なPと老化したAとのあいだに葛藤を起こすタイプがある。すなわち、時代が変化しても、子ども時代から身についた戦前の義理・人情を中心とした価値観は、簡単に変わるものではない。
しかし、現実的には、脳の動脈硬化などによって、現実認知のAの力が衰退してくる。また、体力やバイタリティ(C)も低下してくるため、Pが古めかしい価値観や理想をいかに主張しても、実行に移せない状態になる。このようなP、A、C間のあつれきとアンバランスは、多かれ少なかれ、老人の自我常態の特色である。

セルフコントロール―交流分析の実際
池見 酉次郎 (著), 杉田 峰康 (著)
創元社; 新版 (1998/11)
P50

セルフコントロール:交流分析の実際

セルフコントロール:交流分析の実際

  • 出版社/メーカー: 創元社
  • 発売日: 1998/11/01
  • メディア: 単行本

「頭髪が白くなったからとて<長老>なのではない。ただ年をとっただけならば〔空しく老いぼれた人〕と言われる」(「ダンマパダ」―法句経― 二六〇)

ボクは坊さん。
白川密成 (著)
ミシマ社 (2010/1/28)
P134

ボクは坊さん。

ボクは坊さん。

  • 作者: 白川密成
  • 出版社/メーカー: ミシマ社
  • 発売日: 2020/09/10
  • メディア: Kindle版

 

 

なぜ短命だったかというと、動物性蛋白質や脂肪分の不足が主な原因だったと考えられている。
~中略~
 たしかに欧米では「肉の摂りすぎが短命の要因」として、長寿の日本を見習おうという動きもある。
だが、アメリカ人の場合、一日に約一四〇グラムもの脂肪を摂っているのである。
それに比べて日本人は約六〇グラムである。肉に関しては、アメリカが一日に約三〇〇グラム、日本は七八グラムである。
~中略~
 つまり肉は摂りすぎるのはよくないが、摂らなさすぎも問題がある。
「菜食主義がいい」「年よりは魚だ」などと、決めつけて食生活が偏ってしまうのはかえってまずい、ということだ。

人は「感情」から老化する―前頭葉の若さを保つ習慣術
和田 秀樹 (著)
祥伝社 (2006/10)
P123
人は「感情」から老化する―前頭葉の若さを保つ習慣術 (祥伝社新書)

人は「感情」から老化する―前頭葉の若さを保つ習慣術 (祥伝社新書)

  • 作者: 和田 秀樹
  • 出版社/メーカー: 祥伝社
  • 発売日: 2006/10/01
  • メディア: 新書

 

P44
老人は人間の最大の人権の一つを失う。老人は対等なものからもはや批判されない。
(「格言と反省」から)

P48
人は子どもを大目に見るように、老人を大目に見る。
(「格言と反省」から)

ゲーテ格言集
ゲーテ (著), 高橋 健二 (翻訳)
新潮社; 改版 (1952/6/27)

ゲーテ格言集 (新潮文庫)

ゲーテ格言集 (新潮文庫)

  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2021/02/17
  • メディア: 文庫

P62
 高齢になると、人の役に立っている実感が得られなくなる、ということがわかっています。1)
見る・聞く能力が落ちる上に体を動かす能力も十分でないため、周りのサポートを必要とするからです。
 特にそれまで主婦として支えてきた、仕事で家を支えてきた、という自負があるひとほど、今の状況に満足できません。
あなたも「仕事も家事もしなくていい」と言われたら最初は嬉しいかもしれませんが、何だか満たされない思いにならないでしょうか?満足できない高齢者は自分が否定されている気がして、「死ねばいいと思っているだろう」「早く死にたい」などと言ってしまいます。

P67
 特に注意が必要なのは、家族の死別で環境が変わった時です。高齢であるために、夫ないし妻に先立たれます。老夫婦が同時に亡くなることは事故でもない限りないので、家族がいても、ほぼ確実に独り身・1人暮らしの時期がやってきます。そして1年以内、特に6か月程度では残された高齢者は死亡率が40%上昇します。4)
 つまり死別後の1年間は、周りはそんなに忙しくてもこまめに連絡をとって様子を確認したほうがいいのです。配偶者との死別により、鬱状態になる人が多きことも覚えておいてください。
 残された側が男性だと要注意です。男性のほうがより危険であることがわかっており、鬱にならなくてもお酒におぼれてアルコール中毒になる確率も上がります。

老人の取扱説明書
平松 類 (著)
SBクリエイティブ (2017/9/6)

老人の取扱説明書 (SB新書)

老人の取扱説明書 (SB新書)

  • 作者: 平松 類
  • 出版社/メーカー: SBクリエイティブ
  • 発売日: 2017/09/05
  • メディア: Kindle版

P133
 ある茶人が言っていたことですが、歳をとったら、何か人前に身をさらす稽古事をするといいと。
 人前で芸をするなどして、人の視線にさらされると、いやでも身だしなみ、立ち居ふるまいに神経を使うようになる、ということなのでしょう。  その緊張感が心身によい影響を与えるのだと思います。

P158
 いまの時代、ひと昔前の日本の社会と違い、老人世代は尊敬されるどころか、若い世代からは嫌われる存在になってしまっています。
たとえば、加齢臭という言葉がテレビのCMで、平気で流れるということ自体、嫌老社会の一端をあらわしているのではないでしょうか。
 そんな社会の中で、嫌われる勇気をもつということは、孤立を恐れない自覚ではないでしょうか。自分自身の内なる声に、忠実に生きて行動し、若い世代の顔色を見たり、阿(おもね)ったりしないということです。
 同世代に対しては、これまでのような、慣れあい的な世間付きあいを遠慮する。自分がどうしても、出席したい、行きたいと望まないかぎり、冠婚葬祭から身を引く。

百歳人生を生きるヒント
五木 寛之 (著)
日本経済新聞出版社 (2017/12/21)

百歳人生を生きるヒント (日本経済新聞出版)

百歳人生を生きるヒント (日本経済新聞出版)

  • 作者: 五木寛之
  • 出版社/メーカー: 日経BP
  • 発売日: 2018/05/23
  • メディア: Kindle版

 一 人生は一日一日と費やされて行き、あますところ次第に少なくなって行く。それのみかつぎのことも考慮に入れなくてはいけない。
すなわちたとえある人の寿命が延びても、その人の知力が将来も変わりなく事物の理解に適し、神的および人間的な事柄に関する知識(1)を追求する観照に適するかどうか不明である。
なぜならば、もうろくし始めると、呼吸(2)、消化、表象、衝動、その他あらゆる類似の機能(3)は失われないが、自分自身をうまく用いうること、義務の一つ一つを明確に弁別すること(4)、現象を分析すること(5)、すでに人生を去るべきときではないかどうかを判断すること(6)、その他すべてこのようによく訓練された推理力を必要とする事柄を処理する能力は真先に消滅してしまう。
したがって我々は急がなくてはならない、それは単に時々刻々死に近づくからだけでなく、物事に対する洞察力や注意力が死ぬ前にすでに働かなくなってくるからである。

マルクス・アウレーリウス 自省録
神谷 美恵子 (著)
岩波書店 (2007/2/16)
P35

マルクス・アウレーリウス 自省録 (岩波文庫)

マルクス・アウレーリウス 自省録 (岩波文庫)

  • 作者: 神谷 美恵子
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2014/12/18
  • メディア: Kindle版