2024年12月18日水曜日

京都という町はおそろしい町

  そのうち、だんだんわかってきたことだが、この青年は、きのうきょう、西本願寺に出入りしたのではなく、という。
根掘り葉掘りきいてみると、おじいさんもひいじいさんも、
「お菓子のご用はおへんか」
ときいてまわったそうだし、さらにきいてみると、三百数十年前の天正年間から、れんめんと「お菓子のご用」をきいてきたという。
 そのころ、西本願寺は、いまの大阪城の位置に、城郭同然の巨刹を築いて、天下の門徒を支配していた。
~中略~
 その石山合戦の兵糧方だったのが、この青年の先祖だというのである。
この菓子屋さんには、
松風(まつかぜ)
という名菓があり、それは石山合戦のときの携帯口糧だったという。
~中略~
京都という町は、これほどにおそろしい町なのだ。
(昭和36年11月)


司馬遼太郎が考えたこと〈2〉エッセイ1961.10~1964.10
司馬遼太郎 (著)
新潮社 (2004/12/22)
P64

司馬遼太郎が考えたこと〈2〉エッセイ1961.10~1964.10 (新潮文庫)

司馬遼太郎が考えたこと〈2〉エッセイ1961.10~1964.10 (新潮文庫)

  • 作者: 遼太郎, 司馬
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2004/12/22
  • メディア: 文庫

 


西本願寺 唐門[京都]

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