2024年12月6日金曜日

ナショナリズム

 国家は、それが成立すべき内的外的要求により成立発展してきた。日本には外的要求がほとんどなかった。
~中略~
しかし、現在はもう外的要求は全て出揃っている。日本人がそれを知らない、知ろうとしないだけである。
~中略~
現在の時点はまさに日本人に、わたしたちの持っているナショナリズムが―いやナショナリズムを欠いているということが―どれほど世界史的に見て特殊なものか、現在あるべきナショナリズムとしてはなにが欠けているか、どうすればわたしたちが本当の、あるべきナショナリズムを身につけられるのかを、まともに考察すべきことを要求しているのである。

会田 雄次 (著)
日本人の意識構造―風土・歴史・社会 (講談社現代新書 293)
講談社 (1972/01)
P214

 愛国心は自然発生的に生まれるものである。おそらくは、人の生来の帰属本能の現われであり、遠くはそんなDNAに起因する本能的なものであろう。でも、どの国に帰属するかは、もちろん生まれ育った環境によって決まる。
  外国にいる日本人は、例外なく日本に対する愛国心を持っている。離れたところで自分を客観的に見る機会があると、愛国心が見えてくるからであろう。
 ~中略~

 愛国心の形成は、自国の伝統や歴史、文化に依存している。伝統や歴史を重んじる心、文化を尊ぶ心さえあれば、必ず愛国心は発現される。
~中略~

 だから愛国心は、ほうっておいても育つ。伝統や歴史、自国の文化を愛する環境が培養器となるのだ。
~中略~

 もしこのごろの若者に愛国心が欠如しているというなら、愛すべき日本の伝統や文化が失われている証拠ではないかと疑うべきである。それこそ大人たちが、反省すべき点である。愛国心教育より、日本文化の立て直しのほうが大切である。
 その一つである地方文化が、無分別な市町村合併で崩れ去ろうとしている。大切な歴史的名称も失われてしまった。帰属意識の大きなよりどころが失われているのだ。愛郷心などない、はぐれものの世界になる。
それがもう始まっている。愛国心など生まれる余地はない。

 本当に国を愛する心は、自国の文化を享受し、生まれた町や村を懐かしみ、国の歴史を客観的に見ることから、自然発生的に生まれる。
そのとき自国が果たした歴史上の役割、他国に与えた痛みまで知ることによって、自国のアイデンティティーに対する帰属心が確立され、初めて健全な愛国心が生まれるのである。 

寡黙なる巨人
多田 富雄 (著), 養老 孟司 (著)
集英社 (2010/7/16)
P162

 

 

寡黙なる巨人 (集英社文庫)

寡黙なる巨人 (集英社文庫)

  • 作者: 多田 富雄
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2010/07/16
  • メディア: 文庫

 

 

>>>パトリオティズム(愛国心、郷土愛)

ナショナリズムというのは、民主主義とか国民、国家主義といったふうに、社会科学の用語として使われるばあい、あまりに輪郭が鮮明すぎてミもフタもなくなるが、本来ナショナリズムとはごく心情的なもので、どういう人間の感情にも濃淡の差こそあれ、それはある。  自分の属している村が、隣村の者からそしられたときに猛然と起こる感情がそれで、それ以上に複雑なものではないにしても、しかし人間の集団が他の集団に対抗するときにおこす大きなエネルギーの源にはこの感情がある。  

花神〈上〉
司馬 遼太郎 (著)
新潮社; 改版 (1976/08)
P313  

 

花神(上) (新潮文庫)

花神(上) (新潮文庫)

  • 作者: 司馬 遼太郎
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 1976/09/01
  • メディア: 文庫

エスノセントリズム(集団中心主義)

司馬

どの集団も、自分たちの集団が世界一で、
ほかはろくでもない輩だから排除しなきゃいけないと考える性向がある。

司馬 遼太郎 (著), 井上 ひさし (著)
国家・宗教・日本人
講談社文庫 (1999/6/15)
P14 

 

 

国家・宗教・日本人 (講談社文庫)

国家・宗教・日本人 (講談社文庫)

  • 作者: 司馬 遼太郎
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 1999/06
  • メディア: 文庫

 

 

 

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